View展アーティストトーク③

715日(日)に名古屋芸術大学卒業生による「View展」の3回目となるアーティストトークが開催されました。

蒸し暑い中、30名程の参加者の方に来ていただきました。ありがとうございました。

最後となる今回のトークでは、6名のアーティストによる作品、制作についてのお話を順にしていただきました。須田先生による進行で、それぞれの作家さんから色々な話をお聞きしました。

 

1人目は、今年の3月に卒業された上村静さんです。彼女の作品は、地下1階の展示室入って左側に展示している絵画2点です。

 


今回展示している2点の作品は、紙に鉛筆を使って描かれたものと、パネルに油絵具を使って描かれたものの2点ですが、どちらも同じモチーフを描いているそうです。何か現実にあるものや、何かの素材等をモチーフとしている訳ではなく、記憶や想いといった目にはみえないものをモチーフにしているとのことですが、何をモチーフにしているのでしょうか?私は、動物か何かかなと思って見ていましたが、みなさんはどうでしょうか。作品を見て、いろいろと想像してみてください。

 

2人目は、今年の2月から4月にフランスへレジデンスの旅に行っていた松尾侑香さん。彼女の作品も上村さんと同じく地下1階の展示室入って左奥の角に展示されています。

 


フランスでの生活が作品へ影響を及ぼしているという事は無いそうで、それよりも、滞在中にモロッコへ行かれた際に興味深い体験をされ、今回の作品にも少し反映されているそうです。全体を見ると、インパクトがある作品となっています。その作品を構成している一つに、赤い丸い"何か"があります。それらは、それぞれ異なる表情をしており、これらの表情は、松尾さんのその時の感情や思いが出ているとのことでした。どんな表情があるのか探してみるのも面白いです。

 

3人目は、2年前から北名古屋市にあるアーティストの共同スタジオ「i/0」にて制作活動を続けている、馬場智子さんによるトークです。3階へと上がる階段を上った正面の壁に展示しています。

 


彼女は、オリジナルの文字をモチーフに作品を制作しています。壁一面に、馬場さんによる文字が、ある一定のリズムをもって配置されています。この文字によるシリーズは、学部3年次から続けて取り組まれているそうで、もう5年〜6年になるそうです。今回の展示では、同じ言葉を繰り返し左から右へと流れるように配置しているそうです。どんな言葉が綴られているのでしょうか。想像してみるのも楽しいかもしれません。


4人目は森部英司さんです。ちょうど、馬場さんの作品が展示してある壁の向こう側に、作品を展示しています。

 


森部さんは、一貫して馬を対象に作品を制作し続けています。乗馬クラブでのお仕事をきっかけに、馬や馬具をモチーフとした作品制作やパフォーマンスを実施しているそうです。今回展示しているのは、《Genealogy》と《OGAKUZU》のシリーズです。《Genealogy》では、森部さんが取材した乗馬クラブや厩舎で出会った馬たちをモチーフに描かれています。人間によって作られていく(調教される)馬への興味から描き始めたとのことでした。それぞれに表情があり、馬のいろいろな部分が構成されていて、一つの馬の顔となっています。

 

5人目は、上村さんと同級生で卒業後は、ご実家の福井県へ戻って制作活動を続けている萬未来子さん。3階展示室の右奥にある壁の裏側に2点展示をしています。

 


作品は、パネルに貼られたキャンバスの上に、紙に描かれた作品が貼付けられています。萬さんは、絵画の厚み、層に関心があるということで、描かれる作品も何層かの構造になっています。まず紙にマスキングテープを貼って油絵具を塗り、引っ掻いてモチーフを描き、乾いてから、クレヨンで彩色して、マスキングテープを剥がし、出てきた紙の部分に鉛筆で描いているそうです。作品に近づいてじっくり観察すると、紙の部分やクレヨンの部分、引っ掻いた跡などが見えてきますので、ぜひ近づいて見てください。

 

6人目は、上村さんや萬さんと同様に今年の3月に卒業した田中里奈さんです。3階の展示室に入って右側に掛かっている絵画が田中さんの作品です。

 


田中さんが描く風景は、田中さんの記憶にある思い出の中の場所がモチーフとなっているそうです。ここは、こんな風に道路があったなとか、この辺りに木が生えていた、この道を通ってコンビニに行っていたなといった個人的な記憶が源泉となって描かれています。そのため、多角的な視点が画面の中で共存しています。記憶や思い出を描く中で、憶えているはずなのにハッキリ思い出せない部分、その曖昧な記憶の感覚が興味深いと話していました。田中さんの記憶に触れることができる作品なのだと思って、改めて鑑賞すると、その思い出を少し共有できる気がして面白いです。

 

627日(水)から始まった展示も、722日(日)が最終日となります。

皆さまのご来館をお待ちしています。


R.K