7月8日に名古屋芸術大学卒業生による「View」展のアーティストトークが行われました。
今回のトークでは、参加作家15名のうち、伊藤里佳さん、荒木由香里さん、田中桂さん、宇佐見まりえさん、坂柳光香さんに作品や制作についてお話をしていただきました。
伊藤里佳さんはモノプリントという方法で版画の作品を制作しています。
水を吸収しない板の上に直接絵の具で描き、それをプレス機に通してプリントするそうです。
版画と聞くと大量生産できそうですが、直接描いたものをプリントするので、毎回作品は1点ものなのだそうです。
また、プレス機を使って制作できる作品の大きさには限りがありますが、プリントしたものを何枚か合わせて1つの大きな作品も作っているそうです。今回の展示でも、4枚のプリントを合わせた作品が2点展示されています。
続いて荒木由香里さんは展示する空間に合った色を選び、その色と同じ色のモノを集め、それらを組み合わせて作品を制作します。
今回アートラボあいちで展示されている作品「Yellow」は、以前他の展覧会用に制作したものだそうですが、アートラボあいちの空間に合うということで今回の展示となりました。
この作品は、黄色の絵の具バケツや、プラスチックのチェーンやスティックなどが組み合わさって出来上がっています。
荒木さんは立体物が大好きだそうで、いつか作品に使いたいと気になったものを収集しているそうです。この「Yellow」以外にも、「Red」や「Black」という作品もあるそうです。
続いて田中桂さんは、女性が正面を向いている4枚の絵画を展示しています。4枚とも同じ女性が描かれていますが、泣いていたり、口をガムテープで塞がれていたりします。一見、暗いテーマの作品なのかと思いますが、生きていれば色々と辛いこと(泣きたくなることも、主張したくてもできないことも)があるけれど、前を向いていきたいということで正面を向いているそうです。
学生の頃は恋愛などをテーマにして制作していたそうですが、卒業後は社会と自分というテーマをよく考えるようになったとのことでした。
続いて宇佐見まりえさんは平面の作品を中心に制作しており、今回の作品は、大人になった自分が、子どもの頃に見ていた風景を、あの頃はきっとこういう風に見えていたであろうと考えて描いたそうです。
最近よく小さい時のことを思い出すのでこういった作品を制作し始めたとのことでしたが、子どもの頃の記憶や感覚が意外と自分の中に残っていると話していました。今回の展示では暗い色を使った作品が多いのですが、それは夜を表しているそうです。
宇佐見さんのお話を聞いていて、同じ風景でも年齢やその時の気分によって景色の色や雰囲気は変わってくることを思い出し、お話を聞く前とはまた違った角度から宇佐見さんの作品を見ることができました。
そして坂柳光香さんは開口一番、「私の絵は鳥のフンなんです。」と発言し、会場がざわめきました。話を聞いてみると、小学校の授業で鳥のフンを顕微鏡で見たことがあるそうです。その時に見たフンには、虫の足のかけらや消火できなかったものなどが所々確認できたのだそうです。
坂柳さんの作品は、一見何を描いているのかわかりません。ですが、よくよく見てみると女の子や花が描かれていることに気がつきます。フンで見た「何かのかけら」の要素が入っているのだなぁと納得できました。
今回の作品は、坂柳さんが岐阜にある鍾乳洞へ女友だちと遊びに行ったことが描かれているそうです。